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議決権ゼロの属人的株式

今回は、【税理士を守る会】での質疑応答をご紹介します。

(質問)
顧問先の定款に

「株主〇〇〇は議決権を有しない。」

という条文がはいっています。

司法書士さんが作成したのものだそうです。

初めて観ますが、このような定款の定めは有効なのでしょうか。

(回答)
会社法109条2項において、公開会社でない株式会社は、

(1)剰余金の配当を受ける権利、

(2)残余財産の分配を受ける権利、

(3)株主総会における議決権に関する事項

について、株主ごとに異なる取扱いを行うことを定款で定めることができるとされています。

そのような、属人的な定めがなされた株式は、属人的株式と言われています。

したがって、株式に譲渡制限がついている株式会社については、株主ごとに、議決権について異なる定めをすることができ、特定の株主についてのみ、議決権を有しないこととすることも可能です。

もっとも、このような属人的な定めについても、強行法規に反することはできません。

例えば、105条2項において、

(1)剰余金の配当を受ける権利、及び

(2)残余財産の分配を受ける権利の全部を与えない旨の定款の定め

は、その効力を有しないとされていますので、剰余金の配当も残余財産の分配も受けることのない旨の定めは、属人株式といえどできません。

また、会社法上の規定があるわけではありませんが、裁判例においては、

株主平等原則の趣旨からして、「差別的取扱いが合理的な理由に基づかず、その目的において正当性を欠いているような場合や、特定の株主の基本的な権利を実質的に奪うものであるなど、当該株主に対する差別的取扱いが手段の必要性や相当性を欠くような場合」には、そのような属人的な定めは無効であると解されています(東京地裁立川支部平成25年9月25日判決)。

したがって、ご質問の会社においても、特定の株主についてのみ議決権を有しないこととした経緯等(例えば、敵対的な特定の株主を経営から排除する目的で行われた場合など)によっては、差別的取扱いが合理的な理由に基づかずその目的に正当性がない、又は、差別的取扱いが手段の必要性や相当性を欠くとして、当該属人的な定めが無効であるとされる可能性があります。

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