税理士事務所の業務は、大きく分けて法律で定められた税金に関する業務と法律に定めのない会計業務やコンサルティング業務などがあります。
ただ、税理士資格の有無で担当する業務は変わってきますし、税理士事務所で働く際に必要な知識もありますので、今回は税理士事務所の仕事内容について解説します。
目次
税理士・税理士事務所とは
税理士とは、税の専門家であり、納税者の税に関する相談・申告書の作成・節税アドバイス等を業務として行う職業です。
八士業の一つである税理士の仕事は無償独占業務であり、国家資格である税理士資格がないと、有償無償問わず、税理士法で定める業務を行うことはできません。
税理士事務所は、税理士資格の有する人が税理士業務を行うために設置する事務所をいい、個人で税理士事務所を開業する方もいれば、2名以上の税理士が税理士法人を設立して業務を行う方もいます。
税理士や税理士事務所、税理士法人などの名称を用いることができるのは、税理士資格を有する方や税理士が設立した法人だけですので、税理士資格が無い人が税理士のもと税務に関する仕事に携わる場合、税理士事務所や税理士法人で働くこととなります。
税理士事務所の仕事内容
法律で定められた税理士の仕事内容は、大きく分類すると「税務代理」・「税務書類の作成」・「税務相談」の3つです。
税務代理
税務代理とは、税務署など税務官公署に対する申告・申請、調査・処分に関し税務官公署に対してする主張や陳述を、代理または代行することをいいます。
たとえば法人は、税務署に対して法人税の申告書を作成して提出しなければいけませんが、税理士は法人(納税者)に代わって申告・申請等を行うことができます。
また税務調査が実施される際は、税務署と納税者の間に入って調査の日程調整を行うこともありますし、税務署からの質問に対して納税者の代理で意見や主張を述べることも業務の一つです。
税務書類の作成
税務書類の作成とは、税務官公署に対する申告書・申請書を作成することをいいます。
「作成」の意味としては、自己の判断に基づいて税務書類を作ることで、単なる代書は「作成」には含まれません。
控除額の計算や、特例の適否判定などは税務書類の作成に該当しますので、税理士資格が必要です。
一方で、例えば納税者本人が腕をケガしていること等で申告書を作成することが難しいときに、家族が納税者の指示に従って申告書を代書するのは、税務書類の作成には当たりません。
税務相談
税務相談とは、税務官公署に対する申告や主張、陳述または申告書等を作成する際、税金の計算に関する事項について相談に応ずることをいいます。
税金対策や税務申告に関する必要な手続きに関する相談は「税務相談」に該当し、「相談に応ずる」とは、具体的な質問に対して回答することや、指示または意見を表明することです。
たとえば確定申告の期間や、特例制度の存在を教えることは税務相談には該当しませんが、納税者個人の状況を踏まえて適用できる節税方法を提案したり、特例の適否判定を行うことは税務相談に該当します。
税理士事務所で働くスタッフの業務内容
税理士事務所を立ち上げるのには税理士資格が必要ですが、税理士事務所で働く場合には法律上においては資格は問われません。(業務遂行能力としての資格の有無が問われることはあります)
税理士事務所のスタッフとして働く場合の代表的な業務は、主に2つの業務があります。
記帳代行業務
記帳代行とは、企業や個人事業者のお金の入出金履歴や領収書、請求書から仕訳を行い、帳簿を作成する業務です。
帳簿は原則納税者が作成すべき書類ですが、帳簿の作成には簿記や会計の知識が必要です。
簿記や会計の知識がないと適切に仕訳をして帳簿を作成することは難しく、誤った仕訳をしてしまうと正しい財務諸表の作成が出来ず、結果として適正な税額計算もできません。
そのため納税者は税務書類の作成だけでなく、帳簿作成も税理士へ委託するケースがありますが、税理士一人で多くのクライアントの会計帳簿を作成することは困難ですので、税理士事務所に勤務しているスタッフが税理士とともに記帳代行業務を行うことになります。
クライアントへの対応(巡回業務)
税理士は税務書類を作成するだけでなく、税金に関するアドバイスも行うため、クライアントとの連絡のやり取りは重要です。
ほとんどの税理士事務所は、複数のクライアントから依頼を受けて業務を行っているため、連絡のやり取りは税理士のみならずスタッフも対応することになります。
たとえば記帳代行業務を行う場合に必要な領収書・請求書の提出依頼をしたり、先方から税に関する質問があれば、税理士へ引き継ぐのも業務内容の一つです。
「税務代理」・「税務書類の作成」・「税務相談」は、税理士資格を有している人の独占業務ですが、クライアントとの連絡などはスタッフが行っても問題ありません。
税理士事務所で働くために必要な資格・条件
税理士として活動するためには税理士資格が必要であり、税理士資格は次の方法により取得することができます。
<税理士資格の取得方法>
● 税理士試験に合格
● 税理士試験の免除要件を満たし税理士資格を取得
● 弁護士が税理士に登録
● 公認会計士が税理士に登録
税理士試験に合格しても、実務経験が通算2年以上ないと税理士として登録することはできませんので、税理士事務所で働きながら税理士資格の取得を目指す方もいます。
税理士事務所のスタッフとして働く際は、必須になる資格はありません。
ただし仕事として帳簿作成を行うことが多くなりますので、最低限の簿記会計知識は必要となります。
まとめ
税理士事務所は、税理士の無償独占業務については税理士が行い、記帳代行など補助業務については、スタッフ・従業員が行うケースが多いです。
従業員として働くのであれば、資格は必須ではありませんので、働き先の一つとして税理士事務所もご検討ください。
また将来、税理士として活動する場合、税理士資格だけでなく実務経験も必要になりますので、税理士事務所で働きながら試験合格を目指すことも選択肢です。