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養子縁組の無効

今回は、【税理士を守る会】の質疑応答をご紹介します。

(質問)
養子縁組の有効性についてお聞きしたいです。

被相続人と孫が死亡日に養子縁組をしています。

被相続人は認知症の気がありました。

届出の時点では意思能力を失っていましたが、それ以前に養子縁組に合意していた場合、養子縁組は有効に成立するという認識でよろしいでしょうか。

この養子縁組が有効である前提で相続手続きを進めた場合、後日、「養子縁組は無効だ」として裁判になることはあるでしょうか。

(回答)
本件では、将来紛争になる要素がありますので、依頼者に説明をした場合には、その説明を証拠化しておくことをおすすめします。

養子縁組が有効とされるためには、縁組意思、縁組の届出が必要です。

縁組意思には、形式的意思(縁組の届け出をする意思・届出意思)、実体的意思(養親子関係を形成する意思)が必要です。

縁組の届け出がされているときでも、正常な判断力を欠く状態で届け出の署名がなされたと認められるときは、形式的意思・届出意思(さらには実体的意思)はないということになります。

縁組意思の存否は、届け出受理の時点を基準として判断されます。

そのため、届け出時点で縁組意思がそなわっていれば、縁組は有効に成立します。

他方、反対に届け出の時点で当事者の一方又は双方に縁組意思が存在しないならば、その縁組は無効になります。

ただし、縁組合意ないし縁組届書作成後に当事者が心神喪失状態に陥り、届出の時点には意思能力を失っていた場合については、

「当事者間において養子縁組の合意が成立しており、かつ、その当事者から他人に対し右縁組の届出の委託がなされていたときは、届出が受理された当時当事者が意識を失っていたとしても、その受理の前に翻意したなどの特段の事情の存在しないかぎり、右届出の受理より養子縁組は有効に成立するものと解するのが相当である。」

と判断されています(最判昭和45年11月24日民集 24巻12号1931頁)。

認知症の高齢者の意思能力(縁組意思)の欠如の有無(養子縁組の有効性)については、裁判例上、下記の事情等を考慮して判断されています。

・認知症の発症時期

・縁組当時における医学的判断

(長谷川式簡易スケール等の認知症の程度のテストの結果,主治医の意見書の記載等)

・介護認定

・ 縁組届の署名の筆跡

・養子との従前の人間関係

・ 日常の言動

・第三者への相談の有無

・弁護士や司 法書士等の専門職の関与の有無

孫を養子縁組する場合、相続人が増え、他の相続人の相続分が減少します。

そのため、養子縁組が当事者の意思能力(縁組意思)を欠くため無効の疑いがある場合、他の相続人から養子縁組無効確認訴訟を提起される可能性があります。

今回は、以上です。

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